KIBIHA

幾夏のさぶあかうんと

鴨の浮寝



(でもいろいろなことを思い出して、十分じゃん十二分じゃんと言い聞かせる)

もう何も見たくない知りたくないずっと眠ってたい。音楽だけを聴きたい。

寂しさからとった行動が一層寂しさを呼んだ。

こんなにも都会で心細いと思ったことはなかった。
出入りする電車がガラス張りの窓から見える駅のベンチで、茫然としていた。ストレス食いを繰り返して習慣になったせいで太ってもう細いとはいえなくなってしまった脚を眺めた。自分で自分の大切なものを壊したんだなと思った。

大学生になったって、懐かしく語れるような高校時代の思い出ややり遂げたことがあまりないことは変わらない。ただ、今思えば悪夢でしかないような生活を、毎日ごまかし続けてどうにか終えたという記憶だけが残っている。残念でしかたなかった。しばらく泣いた。やれもしないくせに、ここから飛び込んだらどうなるかなぁと思った。
寂しい寂しい寂しい寂しい。ちゃんと、誰かにとって替えがきかないひとりになりたかったよ。高校生になれば、と信じて受験も頑張ったけど、やっぱりなれなかった。

常に誰かからの評価を求めていなくともぐらつかない強い自己がほしい。強い気持ちがほしい。
心の中でつぶやくと、ふと強い気持ち・強い愛のフレーズが思い浮かんで、カラオケに行って小沢健二を歌おう、そして前を向こうと思い立った。
心を決めて、精一杯の強がった顔をして歩き出す。でも方向音痴なため30分経っても駅から出られなかった。やっと出た頃にはもう面倒になっていた。何とも言えない。強く生きようにも、強さの根拠がないんだもの。しかたなく、グミを買って電車に乗って帰る。慣れない駅なので3度も乗り間違えた。

きっと自分の人生なんて所詮そういうものなんだろう。思い切り化粧を頑張ろうが、別に誰も見ていない。たぶん服装もどこか外れている。ソースとかすぐ服に飛ばしてしまう。帰り道、何もないところで思い切りつまずく。その他日々やらかす大小のミス。自分はいつも、ダサくて格好悪い。

他の人に頼らざるを得ないこと・助けられることが多くて、人の目を気にせず堂々とやることができなくて、いつもおどおどする。そうすることで、無意識に、何かあったら助けてもらえるような頼りないポジションを確保しようとしているのかな。

でも、とにかく、強く生きようという心がけだけでも、ね。