KIBIHA

つづしつづらんつづらおり

飲み込めない

物語に没入するということがなかなかできない。ときたま熱中すると、物語の筋だけを見つめて読み進められるときもあるが、だいたいの場合は、文章のレトリックやディティールなど、枝葉、いや花弁くらいの些細な部分、さもなければ、全体の空気感や時代設定などやたらと広範にばかり気が行ってしまう。「この台詞は可愛い」など前後の文脈を無視してフレーズだけを拾って書き留めていることもある。登場人物の気持ちやその行動をとった心理について疑問を持つこともあまりなく、良くも悪くも全て額面通りに受け取っている。本を選ぶときも同じで、物語の筋書きや結末ではなく、文体や舞台設定、使用されている語彙の方に重点を置いているらしい。

読書感想文を書くときにその傾向は顕著に現れる。本の内容ではなく著者を含めた枠組みから俯瞰してしまう。箱の内側の登場人物の感情ではなく、箱の外側の作者の気持ちの方を考えている。精巧な筆致、秀逸な風景描写などの評論ぶった言い回ししか浮かばないので、いつも苦戦する。

"しまう"と繰り返すのは、自分でもその変化の心理を未だに理解しきれずにいるから。決して読書を楽しんでいないわけではないが、どうも邪道という感じがする。同じような人にもまだ出会ったことがない。

物語の世界に没入して享楽のためだけに夢中で読む無邪気な読書体験が今後自分に訪れるのか、正直不安だったりする。現実から空想の世界へと目をやり異世界へと羽ばたくことを、日々の忙しさに飲み込まれて少しずつ忘れていく自分がいる。そのことに少しでも危機感を感じているうちは、そういう読書スタイルだと受け止めるには、まだ時間がかかるような気がする。